内部建具(ドア)のグレード感

全体コストの中で余裕があればおそらく①、次に②、最終的に③に妥協するという流れが実はあり、なかなか順番におりていく過程を話すだけで建築主様に理解されることも難しいことが多いため、過去の実例とともにそれぞれのよさを記してみます。

①本物の木で素材も合わせられるとベスト

本物の木で建具屋さんにオーダーで製作すると、

〇高級感がある。
〇自己満足感も高い。
〇自然素材で体にも環境にもやさしい。
〇寸法ぴったりに作ることができる。(見た目もすっきり整う)
△コストが高くなる

(塗装の更新等のメンテナンスが多少はある。)

主なデメリットとしてはコストだけですかね。。最近はいわゆるウッドショックの影響もあり、造作材にまで値上げの可能性があると仕入れ業者から言われています。。

ドアとフローリングを同樹種(チェリー)で合わせた例

ドアは無垢ではなく、狂いの少ない突板(つきいた・合板の基材の上にスライスした薄い本物の木を張り合わせたもの)という材料を一般的には用います。
突板ならば樹種は豊富な種類の中から選ぶことができます。ドアノブや戸あたりももちろん自由に選べます。

壁にとりついているドア枠も当然製作になるため、高コストにはなります。

・完全に自由にできるので、例えば隠し丁番のように丁番なども突き詰めて選んでいくと洗練されたデザインにしていくことができます。

隠し丁番の例
②自然素材はゆずれない

多くの方にとって一生住まうことになる一世一代の大きな買い物ですから塩ビのシートに抵抗がある方もいるでしょう。
突板材ほど資金をまわせない場合の次の手段としては、とにかく木製で、シナベニヤ(シナ合板)等の比較的安価な木材で製作する方法があります。
色をフローリング材にあわせて塗装したり、飽きたら好きな色に塗ることも自由にできます。

①の突板ドアほどの高級感はないながらも自然素材としての満足感が得られます。
巷の建売住宅などはほぼ100%間違いなく塩ビシート貼ですから、この満足感は割と小さくないと思います。

製作になるため寸法はぴったり、①と同様に天井までのフルハイトドアなども可能です。

突板フローリングにドア(シナベニヤ)現場塗装した例
突板フローリングにドア(シナベニヤ)現場塗装の例
③既製品を受け入れる

とはいえ直に触れるフローリングなどにまずはお金をかけたいですから、なかなかドアまで資金が回らないというケースはとても多いです。
最終手段としてはドアは建材メーカーから出ている既製品を利用するという方法があります。
この中ではランクが低いということになりますが、広く一般的に採用されている(当方もよくしている)方法です。
シートになるわけですが最近のものはぱっと見、え?これシート?というくらい、素材感が安っぽくなく、よくできています。

自然素材に比べて施主の満足感は低いかもしれないが、ぱっと見はそう変わらない、、
価格の高低はあるが面材の中にはもやがかったような微妙な色合いのものもあり。
ドアノブの形状・色なども年々選択肢が広がってきていて、割と許せる範囲のものがとても多いです。
デザイン的に物足りないとおっしゃる方は経験上ほとんどいません。(もちろんコストのこともあってのことですが、、)

〇コストダウンにつながる

〇面材は基本的にメンテナンスフリー

③サンプルでの確認_左:メーカー製建具面材、右:チーク突板のフローリング
既製品ドアと無垢フローリングを合わせた例(上のサンプルの実際の写真)
既製品ドアと突板フローリングを合わせた例(上のサンプルの実際の写真)

例えば法令上の理由で防火性能が必要なドアは鉄で造る必要があり、鉄にダイノックシートといわれる木調の塩ビシートを貼って木調のデザインとする方法が公共施設などでもよく採用されています。
全てを木でつくるということが特に都会では防火上の理由からそもそも難しいので、1か所妥協するなら、同じような箇所10数か所妥協するもいいか、、
という考え方もあるかと思います。

人それぞれの価値観で選んでいくことがいいと思うので、過去の経験も踏まえて予算に応じて検討材料をご提示するようにしています。